こんにちは、イベント運営担当の藤村です。

DeNAでは、若手ゲームプランナーの育成を目的に、『座・芸夢 若手ゲームプランナー育成塾 ~未来を担う人に伝えたいこと~』というイベントを運営しています。

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業界内の著名な方々を講師に迎え、実践的な講演・演習を行う本イベントも今回で13回目。毎回多くの参加者にお集まりいただきながら、おかげさまで満1周年を迎えました。

満1周年を記念し、今回お集まりいただいた方には、特製「座・芸夢」手拭いを配らせていただきました。今後も本イベントを継続し、2周年、3周年と続けていければと思います。改めて、これからもよろしくお願いいたします。 

さて、ここからは、本イベントの概要をレポートしていきます。

今回参加できなかった方も、こちらのレポートで会場の雰囲気を感じていただければ幸いです。 


■人をその気にさせるには?――ゲームにおける誘惑の技法


今回ご登壇いただいたのは、コーエーでのゲーム制作(プログラム/企画)を経て、現在はフリーランスとしてさまざまな活動をされている、ゲーム作家・文筆家の山本貴光さん。現在、山本さんはその経歴を活かし、ゲームデザインに関する著作活動をのほか、企業でのプランナー教育や、多くの学校での講師など、さまざまな活動を行われています。

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座・芸夢には、第7回目に続き2度目のご登壇となります

 

◆前回の様子はこちらから

http://creator.dena.jp/archives/46380720.html


今回、山本さんは「人をその気にさせるには?――ゲームにおける誘惑の技法」と題し、ゲームの企画書作成に役立つ、プレイヤー心理の考え方を講義されました。ゲームだけでなく、脳科学や心理学にも造詣が深い、山本さんならではの講義内容となっていました。


講義のまず最初に、学生やプランナーになり立ての人が陥りがちな、「ゲーム企画のワナ」があると山本さんは提示します。


「たとえば格闘ゲームの場合、各々のキャラクターの技表など、そのゲームでできることしか書かれていない企画書があったりします。ですが、これでは企画書として充分とは言えません。ゲームの仕組みよりも、もっと重要なことが書かれていないからです」(山本)

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それではその「もっと重要なこと」とは何なのか? ここで山本さんは実例として、Flashゲームやアプリでも遊べるパズルアクションゲーム「Continuity」を紹介します。

このゲームは棒人間状のキャラクターを操り、鍵を入手して出口となる扉を、ルートを作りながら目指すという、シンプルなものです。

 

「このゲームは見た目も非常にシンプルで、その分ルールや目標を感覚的に理解できます。プレイヤーは「鍵を取ろう」、「扉を目指そう」と、すぐに感じることができるわけです。こんなふうに、プレイヤーが感じる「何かをしたい気持ち」。これこそが、企画書で伝えるべきもっと重要なことです」(山本)

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格闘ゲームの技表などは「ゲームでできること」であり、扉を目指そうと思う気持ちなどは「ゲームでしたいこと」です。では、この二つの関係はどうなっているのか? 山本さんはそれを以下のように提示します。

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「ゲームは、「できること」の提示だけで完成しません。そこに「したいこと」、つまりプレイヤーの心理が加わって初めて、ゲーム体験になります。ゲームプランニングは、そこまでを考えるのが仕事だと思います」(山本)

 

ゲーム企画を考える際、その仕組みだけでなく、それをプレイすることで人間の心身にどんな変化を与えるのかを考えるのが重要だと、山本さんは言います。

講義は心身のうち、「心理」部分に焦点を当て、さらに続きます。

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意識とは通常、さまざまな方向に乱れていますが、ゲームなどのひとつのことに集中すると、その流れは整理されます。その流れを整理すると以下のようになります。

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まずは「知覚」として情報を受け、「記憶」から情報を整理。その後、「知能」でその対象について考え、「情緒」としてさまざまな感情を感じ、「意志」として何かをしたい気持ちになる。それらから「行動」へ繋がる。

このようにしてゲームは、プレイヤーの心理に影響を与えているのではないかと、山本さんは整理します。

 

「先ほどの「Continuity」を例にしてみましょう。まずはゲーム画面から鍵や扉を「知覚」します。鍵を鍵であると認識したり、これは扉だなと受け取れるのは、過去の知識や経験の「記憶」があるからです。その後、鍵を取って扉に向かえばいいと考えるのは「知能」の働き。「へへ、そんなのは簡単だぜ、楽勝楽勝!」と感じるのは「情緒」。それじゃあまずは鍵を取ろうと「意志」を持つ。大まかですが、ゲームで遊ぶときのプレイヤーの心理の変化を、こうした流れと仮定してみることがでるでしょう」(山本)

 

それでは、これらの人間の心理を踏まえ、真に企画が作るべきことは何なのでしょう?

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では、企画を考える側は、どのようにしてそれを考えればいいのか。

そのための練習として、山本さんは「プレイヤー心理マップ」の作成を勧めます。これは、実際のゲームの各場面における、プレイヤーの心理(知能・情緒・意志=知情意)を仮定し、マッピングしてみるというものです。

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もちろんこれらの心理は、人によってさまざまな違いがあります。それも想定し、さまざまなプレイヤー感情を考えてゲームをつくるのがゲームプランニングだと、山本さんは言います。

 

「仕組みだけしか見せないプランナーの方は、実際に多くいます。そうならないためにも、まずはこれからの実習で、皆さんにプレイヤー心理マップを作成していただこうと思います」(山本)

 

ただし、ゲーム開発経験を重ねたヴェテランになると、ゲームの仕組みを見て、頭のなかで動かして感じることができます。想像のなかでそのゲームを遊んでみて、自分が何を感じるか確認できるわけですね。また、仕組みだけ示されても面白さが分からない例としては、「麻雀」について考えてみるとよいでしょう。「麻雀」で遊んだことがない人が、「麻雀」のルールブックを読んで「うわ、めっちゃ面白そう!」と感じるかどうか。これは結構難しいことではないかと思います。では、「麻雀」というゲームで遊んだ時に感じられるはずの面白さは、どうしたら伝えられるか――というわけです。(山本)

■プレイヤーの心理をマッピングする

 

講義を踏まえ、ここからはいよいよ演習です。演習内容は先にも書いた「プレイヤー心理マップの作成」。課題は以下の二つが出されました。 

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第1課題は「ダイスを振って出目を確認する」という、ゲーム性の少ないものになっています。これは、あえて目的を曖昧にすることで人による解釈の違いや、目標設定の差異を作るためのものだったと山本さんは言います。

 

「第1課題は文脈の曖昧さもあって、チームでひとつにまとめるのは難しかったと思います。双六のためにダイスを振るのか、TRPGの命中判定のために振るのか、その他の目的なのか。こうした文脈次第で、振る人の心理も変わるかもしれないからです。人によって想定したことが違っていたと思います。ともあれ、第1課題は、まずプレイヤー心理を考えるための練習問題でした。第2課題は「ババヌキ」という具体的なゲームと、ルールを足すという目標が明確なので、より考えやすかったと思います」(山本)

 

約1時間の演習後は、山本さんによりチームごとにまとめられたアイディアの、軽い講評が行われました。

 

「仮にババヌキという遊びがちょっと物足りないとしたら、それはどうしてか。例えば、隣の人の手札からカードを選ぶ場面では、相手の表情以外にはほとんど手がかりがありません。だから選ぼうにも偶然任せになるわけです。ここにもう少し考える要素を入れるにはどうしたらよいか。「引いたカードを宣言する」というルールを追加することで、手がかりを生み出すなど、そういう観点からよく考えられたアイディアが多かったと思います。心理マップを踏まえることで、プレイヤーがゲームに対しどう感じ、なにをしたくなるはずかという点を意識しやすくなります。そして、作り手はゲーム制作においてなにを考えるべきかを、より明確に自覚できるのではないかと思います。今日の講義の狙いを実感していただけたのではないでしょうか」(山本)

 

講評ののち、山本さんは以下の言葉で、演習を締めくくりました。

古代ギリシアの医師ヒポクラテスの言葉に「人生は短く、術の道は長い」というものがあります。

今回講義した「プレイヤー心理マップ」のような発想や技法は、もしかしたら理屈っぽくて実践的でないと思われるかもしれません。しかし、理論や知識というものは、たくさんの経験を束ねて凝縮したものだと考えてみると、また違った面が見えてくるでしょう。言うなれば、それは先人が経験や試行錯誤をつうじて凝縮しておいてくれた智恵、ショートカットキーのようなものなのですね。

ところで私たちの人生は限られています。ゲームプランナーの場合なら、つくれるゲームの数にも限りがある。ですから、今回ご一緒に検討したような知識や理論を活用することには大きな意味があります。

この「座・芸夢」の場で共有したことも、今後何度も反復して身につけ、ぜひ実践につなげていただければと思います。そして、足りないと感じる点は、みなさんの力で改良して、さらによいものにしていただけたら幸いです。

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次回、第14回の座・芸夢のエントリーも開始しています。

みなさんのエントリーをお待ちしております。

◆開催概要はこちら http://thegame14.peatix.com

 

次回の座・芸夢もお楽しみに!